概要
イラストレーションと感慨
イラストレーションは情報を伝達する媒体の1つであり、目的に沿って作成される絵や図像であり、情報の図解という性格を持つ。マスメディアを通じて社会の中で機能することを大前提としており、グラフィックデザインの中の分野でもある。そのため、作家自身の世界を一貫して追求する芸術・美術とは性質が異なっている。イラストレーションを描くことを職業にしている人をイラストレーターという。
イラストレーションは、日本では略してイラストと呼ばれ一般化しているが、この略称は日本で作られたもので、海外では通じない。現代の日本におけるイラストレーションは単に絵を示すことも多いが、西洋のillustrationは基本的にはその意味がなく、また必ずしも絵だけには限らない。芸術としての絵画(ファインアート)に対し、イラストレーターが制作するような、分かりやすい「ポピュラー美術」に相当するのが現在の広義のイラストレーションであるとも言える。
イラストレーションにはさまざまな環境において大衆に訴求する分かりやすさが求められると同時に、大量に複製されることによって大衆が身近に触れることのできる絵画的表現物ともなっており、即時的な「消費される絵画」であると同時に絵画(タブロー)にはない共有性や同時代性も持つ。他方で消費社会の高度化に伴い商業領域でも「個」に訴求する表現が受け入れられるようになり表現者が美術とイラストレーションを往還し、またメディアも紙のみならずデジタルや環境などへと拡散していったため、美術との境界のみならずイラストレーションそのものの定義も揺らぎつつある。
1990年代から、伝統的な媒体・画材に並んでコンピュータのグラフィックソフトウェアやコンピュータに直接描画するタブレットがイラストレーションに用いられ始めた。 イラストレーターたちはデジタルツールを、発表する作品を手っ取り早く調整・編集・送付する手段として用いるようになってきている。編集者の求めに応じ、人物を取り替えたり、建物を右から左に動かしたりといったことが、元々の作品に実際の変更を一切行うことなく可能である。スピードが重要となる業種ではコンピュータは不可欠なものとなっていることも多い一方で、無個性な仕上がりになりやすく個性を活かすのは難しいとも言われる。
イラストレーションと電化製品
イラストと電化製品といえば、まず思い浮かぶのはカタログや取扱説明書などの挿絵ではないだろか。家電のターゲットというのは広い一般消費者であて、何かを伝えるときにはより分かりやすい、誰が見てもすぐに理解できる表現が重要になってくる。そこで、写真ではなく出来るだけデフォルメしながらもきちんとサイズや形が分かるイラストを多用しているのである。またイラストを使うことで、漫画の様な取り付きやすさも演出し、カタログから興味が離れないようにする工夫もとられている。そういった情報などは今ではインターネットを通じて誰でもすぐに手にできるようになった。また、ブログを通じて使い方や口コミを投稿する者も多く、電化製品を買うときの参考にできる情報も格段に増えてきた。